PROJECT
挑戦する職員たち

EPISODE科研費総額 私大3位
PROJECT MEMBER PROFILE

10年間で大躍進
「立命館モデル」を支える仕掛人と執行人たち

2014年度、立命館大学は慶応大学、早稲田大学につぐ私立大学第3位の科研費総額を獲得した。
10年前に比べ金額は2.3倍、採択件数も2.5倍に。科研費は日本最大の競争的資金であり、革新的な新技術や経済的・公共的価値を創造するとみなされたものが厳選される、いわば、大学の将来性を決定づけるファクター。そしてこの大躍進の柱ともいうべき「研究支援の立命館モデル」を支え続けるのが研究部のメンバーたちだ。


信頼を築き、頼れるパートナーとなる

K.S
科研費は正確には「科学研究費助成事業(以下、科研費)」といって、大学の先生方が取り組む研究を国に認めてもらい、活動のために助成していただくお金。もちろんただ待っているだけで貰えるものではありません。ここ10年で獲得額や件数が大きく増えた理由には、大学職員が先生方のパートナーとなり、省庁などに提出する申請書の質を高めたり、獲得した資金を適切に管理・執行していく“立命館モデル”の存在があります。
Y.S
そうですね。小説家(先生)と編集者(職員)の関係にちょっと似ているというと言いすぎかもしれませんが、イメージしやすいと思います。
K.S
もちろん、先生方はそれぞれの道を長年研究されてきたプロ中のプロ。研究の中身に関して僕らがどうこう言える立場ではありません。ただ、第三者視点で見たときに、「こう表現したほうが伝わりやすいのではないですか」とアドバイスします。せっかくの研究内容や価値がきっちり伝わらなければもったいない。
N.Y
先生方と信頼関係を築いておくことが重要ですよね。でも思っていたより「アドバイスが欲しい」と頼ってもらえることが多いです。
N.S
後はやっぱり、「こんな分野で助成金が求められている」と先生方につぶさに情報提供すること。文科省、経済産業省、厚生労働省、環境省に国土交通省といった省庁や一般企業。今、どんな研究内容が求められているのか、常にアンテナを張り情報に敏感な状態で先生とコミュニケーションをとることを心がけています。

科研費の獲得は、授業を面白くする

K.S
きっと学生の皆さんは普段講義で見ている先生が“研究”している姿ってあまりイメージがないと思うんです。でも、先生が教育をしようと思ったら、その土台には研究がないと、学生には何も伝えられない。研究が進むことは教育内容の充実につながっていく。この循環が大学を一層魅力的にしていくんだと思います。
Y.S
理系の学生の方が科研費を知っているかもしれません。例えば研究費がないと、実験ができない。マウスの解剖をするにしてもマウスや薬、器具が必要になる。自然科学系の実験には莫大なお金がかかるので科研費の存在感は大きいんじゃないかな。科研費は学生や院生、研究員の学びの環境や成長にも関わっていると思います。

J.Y
お金の執行管理をしていると「この先生、精力的に調査しているな」とか、「これだけの金額を使えるからこそしっかりした成果につながるんだろうな」ということが分かります。渡航危険区域に行っていたり、短い期間に何回も調査を重ねていたり「体張っているな」と思うことも多々あります。
N.S
学生にとっては自分の受ける授業がもっと面白くなることが一番ですよね。自分の仕事を学生に説明するときは「これだけ国から認められている先生がたくさんいるんだよ」とPRしています。研究部は学生と直接的な接点はありませんが、先生の研究力を支援することで、学生の成長に貢献しているというやりがいがあって、日々そう意識するよう心がけています。

「攻める」「守る」
一人ひとりが「信頼」を育む

N.Y
私はBKCで理系の教員を担当しています。土壌の中の亜鉛を植物がどう吸収するかという、基礎的な研究に取り組まれている先生がいらっしゃるのですが、その成果を社会に活かしたいと考えておられました。そこで先日、基礎研究と生産現場の課題を繋ぐべく、一緒にとある企業に相談に行きました。農家の困りごとについてヒアリングを重ね、どういう研究テーマにアレンジするかを、先生と意見を出し合いながら一緒に考えたのです。最終的に夏場に採れにくい野菜の発育に貢献できるのではないか、ということが分かりました。先生の研究内容を社会に還元し、喜んでもらう。その一翼を担えることにすごくやりがいを感じます。
N.S
私は衣笠で人文社系を担当していますが、対“人”の研究が多いです。たとえば様々な障害を抱えた人と社会の関係や、介護や認知症、いじめといった社会問題など。一般市民の身近にある問題なので、よりわかりやすく発信し、アクセスしやすい環境を用意することを心がけています。Webなどで発信すると、同じようなケースで悩んでいる方々からダイレクトで反応があって社会貢献につながっていると実感します。
J.Y
申請や発信といったお二人の仕事が「攻め」ならば、獲得した科研費が適正なルールの範囲内できっちりと使われていくか、執行管理をするいわば「守り」を務めるのが私や山下さん。膨大な研究プロジェクトのお金の使われ方をチェックし、研究費の適正管理をしていきます。科研費は税金です。国のルールに加えて立命館独自のルールがあり、それらにのっとって信頼をしっかり確立することも以後の採択にも影響してくると思います。
Y.S
先生方は研究のプロです。でも科研費の適正執行のプロではありません。時には“耳障り”なことも言わなきゃいけません。でも、そういう積み重ねが先生との信頼関係をつくっていく。最終的に先生の研究がうまくいくように僕らは関わっているし、仕事をしています。
これまで対“人”の仕事が多い部署で働いてきましたが、今は対“ハンコ”になりました(笑)。でも、この仕事がなければ研究が前に進まなくなるし、大学の評価も落ちてしまう。
K.S
科研費などの研究資金を獲りにいく人達、獲得した資金を管理し、プロジェクトの進行を管理する人たち、そして先生方。三位一体となって、立命館の教育・研究の信頼を築き上げてきた成果が今につながっているのだと思います。

キーワードは“眠れる獅子”、超えるべき「Border」とは

K.S
科研費についていえば、採択金額で上位2校とまだまだ開きがあります。そこに少しでも近づきたい。そして、この他にも多種多様な競争的資金があります。キャンパスを見渡せば、まだこういった資金にエントリーしていない“眠れる獅子”が数多くいます。今回は“科研費”がテーマですが、先生方とクリエイティブに関われるツールはまだまだたくさんあります。特に若手の職員には活躍して欲しいし、そのために何ができるかを考えていきたいです。
N.Y
立命館は先生を後押しする仕事に同じ目標に向かって教員と職員が各々の役割や強みを発揮する風土が強いと、この仕事を通じて改めて感じています。でもまだコミュニケーションが不足している先生方がたくさんいます。入職して間もない自分にとって、まず目の前のそういったボーダーを越えていきたいです。
J.Y
研究部は仕事が多岐にわたっていて人数も100人近くいる企業みたいなところです。科研費だけでなく、その全体像を知り、知識やスキルを修得してアウトプットできるように力をつけていきたいと思っています。
Y.S
研究部だけでも数々の仕事がありますが、立命館全体に広げるとさらに携われる仕事の可能性が広がります。学生の就職支援(キャリアオフィス)、組織運営(総務)の部署を経て今ここにいますが、どの仕事をとってもその先に「人」が見えるのが大学の魅力です。これからも新しい仕事に挑戦して多くのことを吸収しながら、貢献していきたいと考えています。
N.S
科研費総額で上位2校に追いつくには「全員申請」は到達しなければいけない目標です。“眠れる獅子”を刺激して元気になってもらいたい!そして、もっともっと「立命館は研究力があるね」といわれるようになりたい。そのためにはいろんなことに興味を持つことや“人”が好きなことが大切。そして素敵な笑顔も忘れずに(笑)。そんな人と一緒に働きたいです!待ってます!

取材日 2016年1月8日
※プロフィールは当時のものです。

  • 1

立命館の研究についてもっと知りたい方へ

Another Episode