PROJECT
挑戦する職員たち

EPISODE
APU2030 : APU業務改革
PROJECT MEMBER PROFILE
※その他、17名がプロジェクトに参加中 (2022.12.22時点)


2030年にむけて
わたしたちがAPUの改革を考える。

立命館アジア太平洋大学(以下APU)では、「立命館アジア太平洋大学開学宣言」をふまえ、2030年に目指す将来像として「APU2030ビジョン」を策定した。このビジョンの具体的施策として掲げられたチャレンジ・デザインの実現にむけて、「業務改革検討ワーキンググループ(以下WG)」が2022年4月に設置された。WGのメンバーは、各オフィスからの自薦・他薦によって集まった約20名。APUの組織としてのあり方、職員の働き方などについて難しい課題を取扱いながらも、未来にむけて検討を重ねることに対するやりがいや希望に満ちあふれている。

予測できない時代の到来と言われている昨今、将来の社会を見据えた組織のあり方を考えることはとても難しく、責任が求められる挑戦であるといえる。困難な課題の解決にむけて日々奮闘しているWGメンバーに、それぞれの挑戦を聞いた。

業務改革検討ワーキンググループ、始動

「APU2030ビジョン」の実現のため設定された、2021年から10年間にわたる中長期計画「チャレンジ・デザイン」。ここでは3つの重点目標と、6つのアクションプランが掲げられている。またAPUは2000年の開学以来、2学部・2研究科(アジア太平洋学部、国際経営学部/アジア太平洋研究科、経営管理研究科)で構成されてきたが、2023年4月には新しく「サステイナビリティ観光学部」が設置される予定で、まさに「第2の開学」というべき新しいチャレンジの時期に入っていく。

本ページで紹介する業務改革検討WGでは、より発展的な取り組みを遂行し、支えることができる職員組織の構築を目指して職員業務の改革を進めている。当初は、主に「組織再編」を検討する予定であったが、議論を重ねる中で、再編後の組織を機能させるための変革も必要であるとし、既存業務を見直すこと、そして全員が同じ目標に向かって歩んでいくことができるような機運を高めていくことも重視をしながら、3つのアプローチで改革を進めることとなった。

① 業務効率化
余力創出によって生産性を向上させ、チャレンジ・デザイン実現に向けたリソースを根出する。
② 組織再編
各組織のミッションを明確化し、政策志向の組織とすることで、より発展的な取り組みを行う。
③ 職員・職員組織の基盤強化
目標達成をするための仕組み(職員個人の能力向上、協業の仕組み、PDCAを回す仕組み等)を構築し、定着させる。

議論のプロセスと進捗

業務改革検討WGとしてプロジェクトチームが発足したのは2022年4月。ほぼ全てのオフィスから数名ずつWGへ参加し、合計20名(2022.12.12時点)で約8カ月間、週次MTG等を重ねながら、それぞれのアプローチに関わる取り組み施策を検討してきた。現状を把握したうえで改革の方向性を決めていくために、全職員を対象としたワークショップを開催し、APUが目指すべき姿について自由に意見交換する場を設けたことに加え、業務量調査アンケートによる分析等も行ってきた。

その結果、APU2030チャレンジ・デザインを実現するためには、生産性、組織風土、人材という3つの組織課題を解決する必要があることが分かってきた。これらの解決アプローチとして、上述のとおり①業務効率化、②組織再編、③職員・職員組織の基盤強化という3つの柱を立て、それぞれの解決施策を分科会に分かれて検討していくこととなった。

分科会A(業務効率化)では、業務の標準化/定型化/省力化/効率化の観点から、仕事の「型」を作る、業務の量を減らす施策を中心に検討を進めており、現在はオフィスを越えたスケジュール管理をするための基幹業務スケジュール表等の具体化を進めている。今後は、効率的かつ効果的な会議の在り方や、業務効率化のノウハウをまとめたガイドライン等を策定する。

分科会B(組織再編)では、目標を達成するための組織構造を白紙の状態から再検討し、APU2030チャレンジ・デザインを実現しやすい組織構造について議論を重ねてきた。今後は、2024年4月の新組織への移行に向けて、業務分掌等の詳細準備も進めていく。

分科会C(職員・職員組織の基盤強化)では、主に今回の改革結果を維持・高度化していくための運用設計を中心に検討を進めている。業務を定期的に見直すためのPDCAサイクルの仕組み、組織/個人の目標設定内容の見直し、APU職員としての行動指針の策定、職位別の役割一覧の策定等を進めていく。

発足から約半年の検討状況をまとめ、2022年11月には全学向けの中間報告会を開催し、12月中旬にかけて各オフィス単位で意見交換会を実施。加えて、意見集約サーベイ(個別回答)でも改革に対する意見を集約している。この意見集約結果については、2022年度内に改革方針に反映させて、全学へフィードバックする。


企画課
O.K

「ほどほどの満足」を超えたマクロの視点を

今回のプロジェクトは、職員組織の基盤を強化するための見直しを大胆に行うという、守備範囲が非常に広いものです。各オフィスだけでなく、教員や学生を含む多様な視点を意識しながら検討することが求められる難しさに向き合う一方で、経験豊富な心強いメンバーと一緒にアイデアを磨き合い、今よりも良くなる可能性を見出した時には、大きな希望や喜びを感じます。

現状を正しいと考える人、また異なる立場、それぞれに違う価値観の中で、折衷案を取って「みんなのほどほどの満足」を取りに行ってしまうと、結果として大学のためにならない可能性もあります。各課・個人が業務課題とするミクロの視点に焦点を当てることも必要ですが、まずは大学全体にとって「今できる最善」をマクロの視点で考えることが大切だと考えています。構成員全員が納得して動いていくことは難しいですが、調整をくり返し一歩一歩前進することにやりがいを感じます。実際に自分たちで検討したアイデアが形になり、上手くサイクルが回り始めた時には、このプロジェクトの成果をより実感することになるでしょう。

「誰かの改革」から「わたしたちの改革」へ

現在(2022.12時点)は、業務改革検討WGの検討結果報告に対する意見集約を実施しており、その結果を反映させた改革案で学内提案を進めていくことになります。「誰かが提案した改革案」ではなく、「わたしたちで考えた改革案」として推進していくために、構成員それぞれに参画感を持ってもらうことがカギとなります。職員個人としては、このようなプロジェクトを効果的かつ効率的に進めていく手法を引き続き学び、実践し、新オフィスに再配属された後も大学の発展に繋がるような仕事をしていきたいと考えています。


アドミッションズ・オフィス(国内)
A.Y

少しずつ変わっていく職員の意識にやりがい

コロナ禍で職員の関わりも希薄になっている中で、こういった全学に関わる取組を推進するためには意識的に横のつながりを強化する必要があります。周りの職員が見える形で、一緒に情報を得たり、議論をしたりする場をつくることが重要だと感じています。本プロジェクトの一環として実施したAPUの未来を考えるワークショップでは、職員がオフィスの垣根なく混ざりあってグループワークを行いましたが、ワークショップ終了後には、「他オフィスにも知り合いができた」「目の前の仕事は違えど ”学生のために” という同じ使命感を持って仕事をしていることがわかった」などの声もあり、この取り組みを通して職員の意識が少しずつ変わっていく様子が見えたことにやりがいを感じました。

インクルージョンの体現を目指して

APUには、外国籍職員も多く在籍しています。みんなが同じチャレンジ・デザインの実現に向かって進むための組織を作るには、マジョリティである日本人の考え方に偏った施策にならないようにすることも重要です。APUの多様性は学生、教員組織だけではありません。職員組織でもさまざまなルーツをもった職員が活躍しています。今回の働き方改革のプロジェクトを通して、インクルージョンを体現し、それがダイバーシティ&インクルージョンの成功事例として社会に広く認知されたら嬉しいです。


アドミッションズ・オフィス(国内)
S.K

業務効率化に向けて
バランス感覚を持って変化していく

3年前に一般企業から転職して以来、業務上でまだ紙を使用することが多かったりと、大学のアナログさを感じることが多くありました。そのため、今回の業務改革WGの中では、いかにそういった部分を効率化させていくか、うまくデジタルを利用して業務に反映していくかという点に着目しています。

私は現在アドミッションズ・オフィスで入試に関わる業務を担当していますが、会議資料や広告媒体などに大学が紙を使用している一方で、高校生はWEBのコンテンツを駆使して情報を得ていたりします。そのため、自分たちが発信する情報をさらに拡げていくためにも、こうした時代の流れに沿って自分たちのやり方を変化させていくことが必要だと考えています。各部署が関わるステークホルダーの受け入れ状況によっても、デジタルツールの使い方に変化をつける必要はありますが、状況を見定めて取捨選択をしたり、あえてチャレンジをしたりというバランス感覚を持って推進していければと思います。

チームが同じレベルでデジタルを活用できるように

アドミッションズ・オフィス内では、新型コロナウィルス感染症の流行以降、イベントをオンラインで開催したりという機会も増えたため、業務にデジタルを取り入れていくマインドは高まっていると感じます。しかし、デジタル一択が良いと言うことではなく、従来のアナログなアプローチを、必要に応じて併用していくことも大切だと思います。デジタルで見てもらう時のインパクトを醸成しつつ、実際に対面で会う時にどのような印象を持ってもらうかと言うことについても合わせて考えていきたいです。

いままでの環境を変えてテクノロジーを導入していくということは、やりづらいこともあるかと思います。簡単なシステムを取り入れることでもまだまだ使いこなせていない部分もありますが、それをいかに浸透させて、チームが同じレベルで活用できるようにしていけるかというのがこれからの課題だと感じています。



Another View

自分で考え、自ら行動する 「自由」こそが立命館の強み

立命館アジア太平洋大学 学長 出口 治明

APUは日本の大学の中でも最もダイバーシティが進み、イノベーションが起こりやすい場所です。そのAPUで生まれた起業家・社会起業家が、「世界を変える人」となり、地元大分や広く世界で活躍する未来を信じています。私が考える立命館の強みとは「自由」であること。職員は指示待ちをするのではなく、自分で考え、自ら行動を起こすことができます。職員・教員の立場の差は、機能が違うということだけ。どちらが上ではなく、学生や卒業生も含めて皆がひとつになって立命館・APUをよりよくしていくことが大切です。元気で明るく、楽しく仕事ができる方と、立命館で共に働くことができるのを楽しみにしています。

Profile

京都大学法学部を卒業後、1972年日本生命保険相互会社入社。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを歴任。2005年には東京大学総長室アドバイザー、2006年以降は早稲田大学、慶應義塾大学の講師も務める。2006年に日本生命保険相互会社を退職し、同年、ネットライフ企画株式会社(現ライフネット生命保険株式会社)を設立。2017年に会長職を退任し2018年より立命館アジア太平洋大学の学長に就任。

取材日 2022年12月
※プロフィールは当時のものです。

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