PROJECT
挑戦する職員たち

EPISODE
「世界を変える」社会起業家を育成するAPUの挑戦
PROJECT MEMBER PROFILE

APU起業部「出口塾」”ゼロ”からの始動

学生のおよそ半数を、約90か国・地域からの国際学生(外国人留学生)が占める、立命館アジア太平洋大学。国外のみならず、国内からも全47都道府県から学生が集まり、世界でも類稀なダイバーシティ・グローバル環境を有している。 2018年より、APU学長に就任した出口治明は、さまざまな学生・教職員が“混ざる”APUの環境は、「日本で最もイノベーションが生まれる環境である」と考えた。その強みを生かして、2018年7月より始動したのが、APU起業部「出口塾」。ライフネット生命保険株式会社を開業した経験を持つ出口が直轄で指揮をとる「出口塾」は、1年間で最大5社の起業を目標として、将来本気で起業したいと考える学生を、単位認定なしの実践型課外プログラムとして支援する。大学からの資金0円でスタートしたまさに“ゼロ”からのプロジェクトを支えるのは、業務でなくボランティアで参加する教員と、4つの部署から集結した職員たち。彼らは、雇用種別、部署を超え、通常業務で忙しく働く合間を縫って、いきいきと発想し、各々の経験を活かしてひとつの目的に立ち向かっている。


キャリア・オフィス
T.S

起業経験のない自分が学生をどのようにサポートするのか
手探りの中で自身も知識と経験を重ねる日々

育児休暇を1年いただき、それが明けてすぐにAPU起業部「出口塾」の担当になりました。6月中旬に出口学長と担当する各部署の職員が集まり、1ヶ月後に発足式の実施が決定。学生募集や選考の準備など、とにもかくにも突貫対応。プロジェクトスタート前は他の業務の繁忙期と重なり非常に忙しい1ヶ月でした。蓋を開けてみれば90名もの入塾希望者が集まり、ホッとしました。 まさに「ゼロ」の状態からスタートしたプロジェクトで、起業経験のない自分が起業したい学生をどのようにサポートするのか、全てが手探りでした。プロジェクトを進めるにあたっては、企画内容や指導方法について学長と教員・職員が密に協議をする場を設けて進めていますが、日本人が起業するのとは異なり、国際学生が起業をするとなると様々な問題が出てくるものです。そんな中、他の起業支援に力を注いでいる大学の状況を把握するため、他大学の教員を招いてアドバイスをいただく場を設けたり、行政書士の方を招いて法律の観点から起業についての講義を教職員が受けるなど、私自身も「ゼロ」から知識と経験を積み上げていけることに楽しさをおぼえています。通常業務もある中での出口塾のサポートは、大変忙しいのは事実ですが、課のメンバーの協力を得ながら、経験を積ませていただいています。丁寧な事前調整を踏まえ、万端な体制でスタートする業務フローとは異なり、小さく始めて大きく育てる、走りながら柔軟に進める、という業務スタイルも、働き方を考える良い機会になっています。

APUが多くの方に支えられていると実感

このプロジェクトに関わるようになりAPUがいかに多くの方に支えられているかを実感しています。可能性あふれる学生の夢に対し、行政や自治体、各企業様、そして世界各国にいる卒業生など、たくさんの方が協力していただいていることに対して感謝は尽きません。今後は学生にとってこのプロジェクトがさらに刺激的で知識習得の機会にあふれ、様々なプロフェッショナルとつながりを持てる場にしていきたいと考えています。


国際経営学部 准教授
髙梨 千賀子

チャレンジ文化が根付くAPUで始まった、斬新なプログラム

起業部の話を初めて聞いた時に、ぜひ自分もこのプロジェクトに協力したいと、自ら手をあげました。APUの強みである「ダイバーシティ」と「アントレプレナーシップ」をあわせ、イノベーションを起こすべく、予算も人員もゼロから作り上げるという斬新な企画に、とても魅力を感じたからです。出口塾においては、あくまで学生が組み立てるビジネスプランを軸として、我々教員はメンターとして関わります。そこに、キャリア・教学・校友・学生サポートなど、業務分野の異なる職員の皆さんが、それぞれの業務経験を踏まえたアドバイスや、起業への取組みの中で数々生じる、煩雑な手続き等のあらゆる問題への対応をいただくことで、出口塾を運営しています。

世界中の支援者の協力を得て、新たな一歩を

学生たちには、教員や職員、大学が有する知識やネットワークを学生自身がうまく利用して、一歩一歩起業への道を進んでもらいたいと思っています。現在進行形のプロジェクトですので、進めていく中で様々な問題ももちろん起こりますが、今後は、よりスムーズな支援体制を目指して、起業に向けた取組みにおいて発生しうる問題を想定し、一層、教員・職員がそれぞれもつ資源を生かしながら協力して準備を進めていく必要があると考えています。APUの開学から約20年で得た大きな財産、それは世界中で活躍する卒業生です。現在も、各国に在住する卒業生と大学はネットワークで繋がっています。教職員だけでなく、卒業生やその他APUへの支援者の皆様も含め、APUがもつ全ての力を集結してこの新たなプロジェクトに取り組んでいます。


アカデミック・オフィス
U.R

主業務や得意分野を活かした横断的な取り組み

これまで複数の部署で起業家を招いたセミナーやアントレプレナーシップ教育に関わる取り組みが実施されてきました。私自身もアカデミック・オフィスで、文科省による次世代アントレプレナー育成事業(EDGE-NEXT)の教育プログラムを担当していましたが、それぞれの課で実施しているプログラムを連携させて、ダイナミックな支援をしたいと考えていました。そんな中、出口学長がAPU起業部の立ち上げを検討していると耳にし、これまでの取り組みもふまえて展開できないかと学長に相談しに行ったところ、APU起業部の運営メンバーにならないかと提案を受けました。自身の問題意識に加え、ベンチャービジネスに興味があった私にとっては貴重な経験になると考え、担当職員として参加することにしました。主担当業務とは全く別の取り組みとなるため、これまで以上に業務調整が必要にはなりますが、このプロジェクトに意義を感じ、多忙ななか自主的に手をあげボランティアで参画してくださっている教員の皆さんと一緒に進めていけることにやりがいを感じています。また、既存の組織体系にとらわれず、異なる担当業務の職員が集結し、得意分野を活かして横断的に取り組むことで、自部署だけではできないサポートが可能になり、全学プロジェクトとして取り組むメリットを感じています。

このプロジェクトを契機に新たな目標を

起業を目前にする学生もいるなかで、起業部として今後どのような支援をしていくべきかということを、しっかりと見極め具現化していきたいと考えています。まだまだ発展の余地があるこのAPU起業部を契機として、これまで学内で各々進められてきたアントレプレナーに関わる取り組みを体系化し、学生のチャレンジマインドの育成や自信の醸成ができる支援策を実現していくことが私自身の目標です。


スチューデント・オフィス
K.T

起業ができたとしても継続は困難
ビジネスの現場で活きる実践的な学びを提供したい

ビジネスの現場で活きる実践的な学びを提供したい 過去に起業を希望する学生の相談を受けた際、本当にやりきる強い意思があるか、と問うたことがあります。企業は作ることよりも継続させることの方が難しいと感じるからです。一方で国際学生からはこんなことを言われた事があります。「単位のための苦労は身につかない。もっと実践的な学びを得ることが重要だ」と。まさにこのプロジェクトにおいてはビジネスの現場において活きる実践的な学びが必要だと感じています。概要をレクチャーするだけでは起業後に苦労するのは目に見えています。ビザの問題や資金準備など、プロジェクト開始当初から問題視していたことも本格的に解決していかねばなりません。学生が求める支援を実質的に実現できるかということは、参加している学生のマインドにも大きく関わります。このプロジェクト自体、非常にポップな踏み出しでスタートしましたが、この後結果が出ればその数字がひとつの根拠になり、次のステップへと進みます。起業を考えている学生のことを考えると、一歩進めるのに時間をかけるよりも「やってみよう」という現場の声をスピーディーに取り入れるといった仕事の進め方がこのプロジェクトには必要だと思います。現在のプロジェクトをさらに効果の高いものとするために、私のこれまでの経験を活かして様々なビジネスケースを体験できるプログラムや合宿を提案していきたいと考えています。

次代の流れを作っていける人材が必要

人の考えは流動的で、いつも変化を求めています。教育の現場にゴールはなく、数的評価もされにくいものです。しかし、次の時代を作っていくのは巣立っていく学生たちであり、彼らの育成を通して社会全体が生き抜く力を高めていくという役割を、我々大学職員は担っていると考えています。このプロジェクトのみならず、次代の流れを作っていける方に、職員を目指してもらいたいと思います。

取材日 2019年1月
※プロフィールは当時のものです。

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