PROJECT
挑戦する職員たち

EPISODE
OICの業務効率化に関わる職員の改革とこれから

「日常」こそが改革の場。
働き方を再編し続ける、教育の影の立役者たち
学生の学びを支える教学部。そのミッションとは?

大学職員の仕事というと、学生の成長をサポートするというイメージはあるが、その仕事内容については外からは見えない部分も多い。教学部とは、立命館大学の教育に関する業務を司る部門で、各学部事務室や、教養教育、言語教育を管轄する部課があり、働く職員数は学園全体の約3割にのぼる。

教学部のミッションとは何か。それは、学生が自律的な学習者に成長し、大学・学部・研究科の教育目標に到達できるよう組織的に支援することだ。

教学部の使命を果たすために教務事務の標準化と集中化

「キャンパス全体をラーニング・プレイスに」と位置付けたOICが2015年に開設されて約3年。開設前から教学部で繰り返し議論されていたことは、教学部のミッションを達成するためのよりよい組織づくりのために、学生支援機能や、教学内容の改善への取組みを強化していくことだった。この教学部における議論の中でOICでは、他キャンパスでは別々の棟にあることが普通であった学部事務室を1箇所にまとめる構想が持ち上がり、所属する学部全ての事務室が同じ執務室で業務を行うという、教学部初の取り組みを実現することとなった。現在、OICの教学部の執務室(AC事務室)では、各学部事務室と、学生窓口対応を一手に引き受けるOIC教学課(学びステーション)が配置されている。その特徴である、壁のない事務室を活かして目指したのは、それまで学部ごとに確立していた業務フローの「標準化」と、教務業務の「集中化」だった。

OIC AC事務室に立ちはだかった課題

学部事務室では、学生の所属学部での学びに関する情報発信や履修相談を行っており、特に新しい年度を迎える4月は繁忙期にあたる。新入生の入学、受講登録、学割の発行、履修相談、授業のスタート等々、この時期の業務は枚挙に暇がない。

2016年4月、この年は特にOIC教学課にとって印象深い月となった。2016年2月に学部事務室と学びステーション(OIC教学課)が同室となり、業務を開始して迎えた初めての 繁忙期。学生窓口は問い合わせのために訪れた学生で溢れかえった。教務事務の標準化・ 集中化の議論の中、OICは開設当初から新しいコンセプトの事務室で、精選された職員数での運営を求められており、人員的な余裕もない。また、業務は担当制で、各学部で決まった職員が責任を持って遂行していたため「その人に聞かないと分からない」案件も多く、学生への返答・対応に時間がかかることも多かった。職員たちは時間に追われ、2016年4月のAC事務室は疲労感に溢れていた。

この状況を受けて、OIC教学課の浅岡(当時)と古賀は、同様の事態を次年度に持ち越さないよう、改善策の検討を始めた。その中で見えてきたのは、学部によって来室する学生数や事務室の対応方法に大きな違いがあることだった。そこで、AC事務室における開講(※)と学生への情報発信の方法を改良するため、OICの3学部(経営学部、政策科学部、総合心理学部)の開講業務担当者(※)とともにプロジェクトチームを立ち上げ、その課題解決に挑むことになる。しかし開講に関わる業務は、各学部で異なる教育目標を踏まえた時間割の編成や、学生の履修・登録など膨大かつ重要な情報を扱う繊細な仕事であるだけに、各部署で基盤が出来上がっていたその業務フローを刷新するには多くの時間と労力を割いた。
※開講業務とは、学生生活の基本となる、学部の時間割を編成する業務のこと。

立場の異なる職員の協働が生み出した「働きやすさ」と学生対応の迅速化

AC事務室の開講業務の標準化と集中化の行程は、半年以上かけて取り組みが進められた。3学部の開講・受講登録関連業務を全て洗い出すところから始め、3学部が共通で行っている業務については最も効率的なやり方を採用した。また、学生への情報発信を既存のシステムを使ってオンライン化し、情報公開のタイミングと進度を揃えた。

2017年4月、課題の多かった開講期から1年後、前年度の混雑が嘘のように問い合わせに訪れる学生が少なくなった。結果、職員は学生が個別に抱える相談に応じる時間が格段に増えた。そしてなにより、業務の標準化・集中化が開講業務において実現されたことで、これまでそれぞれで機能していた各学部の業務が「見える化」され、相互のチェック機能が働くことにより、ミスが大幅に減少した。事務室で働く職員は口々に、部署を超えて連携できることによって働きやすくなり、安心感を得た、という。

そして、チームメンバーは今後AC事務室でさらに取り組みたいことが鮮明に見えてきた、と個々の意気込みを語る。この業務改革に力を注いだ職員が、当時と今の心境を語る。


チームリーダー
総合心理学部事務室 事務長 D.S

担当者が変わっても同様の質のサービスを提供するのが仕事。部署を超えて助け合える働き方ができるように。

これまで、立命館大学では学部ごとの建物(学部棟)を基本とした縦割りの部課体制をとっており、学部間で業務における相談を日常的に行うことはありませんでした。OIC は、設計時から、複数ある学部の事務室を1箇所にまとめる構想が練られ、全学に先駆けて、教務事務を標準化・集中化するための環境整備が行われました。OICの教学部に限らず、業務の標準化や集中化は他のキャンパスにおいても課題ですが、これまでの縦割りの体制上、実現しにくかったのも事実です。

今回のプロジェクトを経て、課を超えて助け合いながら仕事ができるようになったことはもちろんのこと、今回の取り組みに関わったメンバーの超過勤務も減るなど、様々な効果を実感しています。また、たとえ今後担当者が変わっても、これまで同様にスムーズに業務を遂行することができる基盤が整ったと考えています。

人材育成の場としてこの業務の流れを活かしていきたい

今回のような取組みは、まだ教学部の全ての業務で実施しているわけでなく、やれるところから順次進めている状況です。今後は他の業務においても、さらに部署を超えて協力しあいながら仕事をしていけるよう、取組みを進めていきたいと考えています。また、このような協働体制は、人材育成にも有効だと考えています。例えば、AC事務室にある部署に配属されれば、まずは教学課が担っている窓口対応の経験を積み、学生実態を学んだうえで学部事務室が管轄する学部教学に携わるというような人材育成が可能となります。このような流れを実現させたいですね。

OIC教学課 K.K

学生からの問い合せが「質問」から「相談」へ。3学部と教学課の日常的な連携も実現。

日常業務を行いつつ、新しい仕組みを考え、構築することは決して簡単ではありませんでした。職員に対するメリットが優先になるのではなく、学生や教員がその効果をどのように受け止めるか、ということを考えなくてはなりません。

今回、各学部から学生に発信する情報の範囲と深度を統一したことにより、窓口での学生からの問い合せは、これまでの「質問」の内容を踏まえた「相談」にかわりつつあります。また、これまで一人で担当していた業務が、複数の部課の視点を入れることで合理化できたことや、部署を超えて相談が スピーディにできるようになったことは、今後に繋がるこのプロジェクトの大きな成果と言えるのではないでしょうか。

理想は、あらゆる業務で協働できる体制の実現

現在、AC事務室にある3つの学部と、5つの研究科が、これまでの「事務室ごとの業務」という概念を取り払い、あらゆる業務で協働できる体制が整えばさらに良いと考えています。また、言語教育や教養教育を管轄する部署や、学生オフィス、キャリアセンター、国際課など、学生窓口を持つ部署との円滑な連携が構築し、一貫した学生サポートが実現するようになればいいと思います。

国際関係学部事務室 A.K(本取組み時、OIC教学課)

メリットは相互のチェック機能

OIC教学課は、開学当初は学部と異なる執務室で業務をしていましたが、2016年2月に3つの学部が執務している AC事務室に移転しました。移転当初は同じAC事務室の中にいても「よそはよそ、うちはうち」という縦割りで仕事をするスタイルが定着していたため改革は一筋縄にはいきませんでしたが、3つの学部の学生窓口対応をOIC教学課(学びステ ーション)で一手に引き受けた(集中化した)ことで見えてきた課題を各学部へフィードバックしていくところから始めました。学生窓口から3つの学部の仕事の進めかたを見比べるとハッキリと良い点・課題点が見えてきます。1つの学部が良い取り組みをしていればそのやり方を他の2学部にも「標準化」していく。3学部とも進め方に課題のある業務は全員で既存のやり方に囚われずに最も効率的な方法を開発し、そのやり方を3学部で「標準化」していく。1つミスがでたら他の学部でも同様のミスがないかチェックし、今後同じミスが起こらないようやり方を全員で検討する。あるいは3学部それぞれが同じ時期に同じ作業をしているなら、教学課に3学部分の作業を集中化しより少ない人数で3学部分の業務を進めていく。・・・こうした作業を積み重ねて1つ1つの業務の「標準化」・「集中化」を進めていきました。

効率化によって生まれた余力を次なる展開へ活かす

今回のプロジェクトのメリットは、職員の業務効率化はもちろんですが、何と言っても学生や先生方に最も効率的なサービスや情報を提供できるようになったことです。また、何かあればすぐに教学課と3学部のメンバーで率直な意見交換をしながら課題解決策を検討できますし、その際もひとつの部署の視点だけでなく、複数の立場からの総合的な目線で検討・業務改善提案ができるようになったことも大きな効果のひとつだと感じています。 今後はこの標準化・集中化の仕組みを、たとえ担当者が変わっても変わりなく、長く機能する仕組みにしていくこと、集中化・標準化によって生まれた職員の余力を学部教学の改革や学生にとってよりよい仕組み作りを生み出す力に変えていくことが次の課題だと考えています。

取材日 2018年1月
※プロフィールは当時のものです。

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